人と人、地域と地域をつなぐ 〜世界に開かれた神奈川を目ざして〜
かながわ国際交流財団 設立40周年

1977年の設立以来、2017年で40周年を迎えたかながわ国際交流財団(KIF)。
どんな時代状況の中で、どのような活動を行ってきたのでしょうか。
主な事業をご紹介しながら振り返り、将来を展望したいと思います。

KIFの歴史は、多くの方のご協力で進められてきました。長期間、多岐にわたる事業の中で、現在のスタッフには見えないことも多いと思います。

当時の様子についてのコメントや、お気づきの点などありましたら、ぜひこちらへご連絡ください。

※一部のスマートフォンでは、文字が正しく表示されないことがありますので、その場合にはPCで閲覧していただくようお願いします。

第13回 外国⼈コミュニティとのつながり

かながわ国際交流財団(KIF)の、設立以来40周年の蓄積をご紹介する連載第13回は、外国人コミュニ ティとの連携強化のための事業をご紹介します。
※画像はクリックすると拡大します。人物の肩書は当時のものです。

●「外国⼈コミュニティ連携強化事業」はじまりと背景

神奈川県には今、約19万8千⼈の外国⼈が暮らしています(外国⼈登録者数/2018年1⽉現在)。その数は東京、愛知、⼤阪に継ぐ全国第4位で、県⺠全体に対する⽐率は2%を超えています。帰化して⽇本国籍になった⼈、国際結婚により親のいずれかが外国⼈である⼦どもたちなど、外国にルーツを持つ⼈たちも含めれば、⽐率はもっと⼤きくなります。外国⼈住⺠の⽐率が⾼い地域では、南⽶などを中⼼に出⾝国が限られることも多いのですが、神奈川の場合外国⼈住⺠の出⾝国・地域の数が173と、⼤変多いことが特徴として挙げられます。

登録者数の上位は、⽇本で世代を重ねてきた華僑や在⽇韓国・朝鮮⼈を含む中国・韓国、1980年代以降上位が続くフィリピン、1990年の⼊管法改正以降⽇系の⼈びとが数多く来⽇したブラジル・ペルー・ボリビア・アルゼンチン・ドミニカ共和国など中南⽶の国々です。また、1980年に⼤和市に開設された「⼤和定住促進センター」(1998年閉所)において日本政府が多数のインドシナ難⺠を受け⼊れた経緯があるため、ベトナム、カンボジア、ラオスの出⾝者も多く、特にカンボジア⼈とラオス⼈は、日本で暮らすそれぞれの国の出⾝者の、約半数が神奈川県在住です。近年は、ベトナム⼈、ネパール⼈の増加が顕著となっています。

外国⼈登録を⾏っている⼈の中でも、永住・定住などの在留資格を持ち、県内に⽣活の基盤を置いて定住している⼈が半数を超えます。



神奈川県の外国⼈総数及び推移(2018 年1 ⽉現在)
出典:神奈川県ホームページ

外国⼈住⺠は、同国⼈同⼠協⼒しあって様々な活動をしたり、継続的なつながりを持って暮らしています。団体として形態を整えている場合もあれば、地域の飲⾷店、教会、学校、勤めている企業や⾷材店等を通じた⼈づきあいなど、ゆるやかな場合もあります。インターネット上のつながりも、⼀定のまとまりを持った「コミュニティ」=集団あるいは共同体としてとらえることができます。このような外国⼈同⼠のつながりは、地域社会で安⼼して⼼豊かに暮らすためにとても重要な働きをしています。

外国⼈住⺠のコミュニティは、⽇本で⽣まれ育った⼦どもたちを対象とした⺟語教室や、⾳楽・ダンスなどの⺟⽂化の継承、困りごとへの対応、国際交流イベントへの参加を通して地域の⼈びとと交流するなど、様々な活動を⾏っています。



愛川町にあるベトナム寺院

カンボジア⺟⽂化継承のための活動(平塚市内)

KIFでは、外国⼈住⺠との共⽣を進める上で、こうした外国⼈のコミュニティとの連携が重要かつ⽋かせないものと考え、「外国⼈コミュニティ連携強化事業」を開始しました。



●「外国⼈コミュニティ調査」の実施

連携事業を開始するにあたり、まず外国⼈コミュニティの状況を把握するため、2011年と2012年の2か年にわたって外国⼈コミュニティのキーパーソンへのインタビュー調査を実施しました。1年⽬は外国⼈登録者の数統計上、当時上位5か国・地域であった中国、韓国・朝鮮、フィリピン、ブラジル、ペルー、2年⽬はベトナム、カンボジア、ラオスの出⾝者を対象としました。

調査結果は報告書にまとめ、県内の⾃治体等関係者に広く情報提供するとともに、ウェブサイトで公開しています。



外国⼈コミュニティ調査報告書。
2か年にわたり8か国のキーパーソンにヒアリング調査を⾏った。


調査では、様々な⽣活課題について外国⼈住⺠から聞くことができました。外国⼈特有の課題として「在留資格」に関係することが挙げられますが、その他に、家族・世代間で⾔語によるコミュニケーションギャップが⽣まれ親⼦の関係に影響が⽣じること、結婚・離婚、⼦育て、教育、医療、保健、福祉、介護、年⾦、防災、⽇本語学習、少⼦⾼齢化等々の様々な⽣活課題があり、それらが複雑に絡み合うことが分かってきました。そして、これらの⽣活課題を少しでも解決するために、相談対応及び通訳の充実、⾃助活動への⽀援、情報流通の促進、さらに複雑な制度の⾒直しや簡略化といった対応も求められていることが改めて浮き彫りになりました。


●東日本大震災の経験を経て

事業を始めた2011年は、東⽇本⼤震災が発⽣した年でしたが、この時、神奈川からも様々な外国⼈コミュニティが被災地へ出向き、⽀援活動を⾏っていました。被災地で暮らす同国⼈の⽀援だけでなく、避難所での炊き出し、⽀援物資の提供、⽡礫の撤去作業等々、出⾝国を超えた⽀援活動が⾏われました。このことは、⽇常では認識されにくい外国⼈住⺠と地域社会のつながりや、外国⼈住⺠の思いや⼒を知る貴重な機会となりました。

KIFは同年5⽉、「神奈川の外国⼈コミュニティのこれから〜東⽇本⼤震災と多⽂化共⽣の地域づくり」と題したフォーラムを、ネパール、ブラジル、ベトナム出⾝者のコミュニティの協⼒を得て開催しました。このフォーラムを通じて、地域社会と外国⼈コミュニティとのさらなる連携促進の重要性を認識することになりました。



東⽇本⼤震災の経験を経て、外国⼈住⺠が⽇本社会について様々なことを考え、これまでとは異なる、地域社会の担い⼿としての視点と⼒とを持つようになってきたことも⾒えてきました。

⼀⽅で「がんばろう⽇本」という国内外からの呼びかけに対し、⽇本に暮らす外国⼈住⺠としてどのように応えるべきかという⼾惑いや、震災時の⽇本社会の団結⼒が排他的な⽅向に向かうのではないかといった意⾒が複数のコミュニティから聞かれました。震災以降7年がたち、益々多くの外国⼈を労働者として迎えようとしている現在、外国⼈住⺠とホスト社会との関わり⽅が厳しく問われていますが、当時を振り返っても、これらの外国⼈住⺠の不安感は⼤変印象深く、⼤きな課題が提起されていると⾔えるでしょう。



神奈川県内等在住のネパール⼈を中⼼としたグループが被災地を⽀援。避難所でカレーの炊き出しやヨガのレッスンを⾏い被災者を励ました。
この時の⽀援活動がきっかけとなり、防災マニュアルのネパール語訳などの活動も実施。
こうした活動がもとになって2017 年には「かながわネパール⼈コミュニティ」が発⾜した。NPO 法⼈化し、相談活動なども実施している。

在⽇ブラジル⼈は2008 年のリーマンショック後に全国ネットワーク(NNBJ)を結成。
NNBJ は震災当⽇にメーリングリストで被災地への⽀援を呼びかけ、募⾦や物資の提供、炊き出し、カポエラやサンバなど⽂化活動を⾏っている。神奈川の関係者ではABC ジャパンやSABJA(いずれもNPO 法⼈)などが参加した。

写真は建設会社を経営するSABJA のメンバーが中心となって被災地へ重機を運搬する様⼦。⽡礫の撤去作業をボランティアで⾏った。ブラジルの国旗とペルーの国旗が見える。

「今回、東⽇本⼤震災発⽣時に、被災地に対する諸活動がすぐに⽴ち上がったのは、それまでに培ったネットワークと⾏動⼒、そして移⺠先である⽇本に対する強い思いがあったからです。できることは最⼤限協⼒したいという思いで被災地に向かったブラジル⼈の数は1000 ⼈を超えます。⽀援物資の提供などで間接的に関わった⼈の数はもっと多いでしょう」
(ABC ジャパン理事⻑ 橋本秀吉⽒/東⽇本⼤震災外国⼈コミュニティ⽀援活動紹介写真展から(KIF 主催・2012 年))


●ポータルサイト「かながわ・こみゅにてぃ・ねっとわーく・さいと」の制作と運営

調査を通じてKIFは、コミュニティとのつながりを維持し、さらに強化していくためには、継続的に連絡を取り合うことや協働作業などが必要であることを実感しました。そして、よりよい多⽂化共⽣の地域社会をつくるため、外国⼈住⺠とともに連携・協働して効果的に事業を展開し、⾃治体等の⾏政機関等と外国⼈コミュニティとの連携が⼀層促進されるように働きかけていくこととしました。

調査後の取り組みの⼀つとして、2012 年、外国⼈コミュニティとの交流や情報流通を促進させるため、ポータルサイト「かながわ・こみゅにてぃ・ねっとわーく・さいと」(以下「かなこみゅ」)の運営を開始しました。多⽂化共⽣に関する情報、交流に役⽴つ情報、外国⼈コミュニティが発信する情報などを分かりやすく分類・整理して掲載しています。

多⽂化共⽣社会の形成には、外国⼈住⺠へのアプローチと共に、外国⼈が暮らす地域社会=ホスト社会の側の理解や変化が不可⽋です。「かなこみゅ」は、ひとつのポータルサイトで外国⼈住⺠の暮らしに役⽴つ情報と⽀援者に役⽴つ情報双⽅が得られるように⼯夫しています。

調査を通じて知り合った外国⼈コミュニティとはポータルサイトの運営を通じて連絡を取り合い、情報の流通を促進しながら、関係づくりを継続しています。「かなこみゅ」は年間4万件を超えるアクセス数を得るまでになりました。

「かなこみゅ」には、県内の様々な外国⼈コミュニティのウェブサイトにリンクするページもあります。たとえば外国⼈コミュニティが⾏うお祭りなどの催しは、出⾝国の⽂化・伝統を守ったり、同国⼈同志の親睦を主⽬的としているものが多く、⾔葉の壁などもあり⽇本⼈向けの発信があまりない場合もあります。そのような催しでも、⽇本⼈との交流を希望し、来場者を歓迎しているものも多いのですが、情報がなかなか関⼼のある⼈に届きません。KIF のサイトによる発信が、外国⼈コミュニティの情報を届けるサポートにもなればと考えています。



かながわ・こみゅにてぃ・ねっとわーく・さいと(かなこみゅ)

かなこみゅにリンクされたコミュニティのサイトの例(アフリカ・ヘリテイジ・コミティ)


●リーフレットの作成「みんなで育てる多⽂化共⽣」

「かなこみゅ」サイト上でホスト社会側と外国⼈コミュニティ双⽅への情報発信を意識したように、紙媒体でも外国⼈コミュニティ調査の報告書とともに、多⽂化共⽣を育むことを⽬的とした啓発リーフレットを作成し、配布しました(2011年度)。

多⽂化共⽣について考えるきっかけとなる情報、外国⼈の暮らしに役⽴つ情報、外国⼈に関する統計情報の⾒⽅などが掲載されています。このリーフレットは2015年3⽉に改訂し、現在も国際交流フェスティバルをはじめとした様々な場で配布しています。



みんなで育てる多⽂化共⽣


●「外国⼈コミュニティとの意⾒交換会」の開催

2011年度には、「外国⼈コミュニティとの意⾒交換会」も開始しました。出⾝国や地域、来⽇背景の異なる外国⼈コミュニティの⽅々に集まっていただき、様々な⽣活課題について意⾒を交換し、併せてコミュニティ間のネットワークづくりを⾏っています。

近年は⽇本での⽣活に必要な知識を学習する場としても活⽤されるようになってきています。ここで得た知識を、リーダーが持ち帰り、コミュニティでシェアする企画が実現しています。

この意⾒交換会はKIF にとって、外国⼈コミュニティとつながる⼤変重要な場になっています。

これまで取り上げてきた話題は次のとおりです。


外国人住民への情報伝達(ウェブサイト、メールマガジン)の強化について
日本語の学習について
外国人住民向け防災ツールについて
助成金申請のポイントと外国人コミュニティを対象とした助成制度における課題
多言語情報の形態(メディア)、テーマと内容、普及の方法
外国人コミュニティへの情報発信について
老後の暮らしと年金の基礎知識
すぐできる!生活防災術〜防災リーダーになるには
女性と家族のためのライフプランとリスクへの備え



外国⼈コミュニティとの意⾒交換会
(2017 年)

様々な国の出⾝者がグループワークで意⾒交換(2018 年)

ワークショップで学び、コミュニティに伝えたいことをボードに記⼊
(2018 年)


●「多⽂化共⽣の地域社会づくり応援事業」による助成の開始

「外国⼈コミュニティ連携強化事業」における取り組みと並⾏して、2013年度からは「かながわ⺠際協⼒基⾦」の助成事業の枠組みに20万円を助成の上限とする「多⽂化共⽣の地域社会づくり応援事業」
を設置しました。(40年のあゆみ「⺠際協⼒基⾦」紹介記事参照)

この助成枠の新設の効果は予想以上に⼤きく、その活⽤により、外国につながる⽣徒を対象とした⾼校進学ガイダンスや学習会の新たな地域での開催、外国につながる⼦どもたちへの学習⽀援の充実、外国⼈コミュニティの主催による相談会の開催、⺟語教室の開催など様々な取組のスタートアップを後押ししました。

「外国⼈コミュニティ連携強化事業」において作成した報告書、リーフレット、ウェブサイトを通じて、県内の⾃治体等の⾏政機関、NGO/NPO 等⽀援者、外国⼈コミュニティ、学校、さらには宗教関係者などから、外国⼈コミュニティの実態とニーズ及び多⽂化共⽣に関⼼を持っていただけたことはとても⼤きな成果でした。そして「かながわ⺠際協⼒基⾦」の助成事業との相乗効果も⽣み出しています。

皆様にも、ぜひ継続して応援をしていただければと思っています。

次回から、外国につながる⼦ども・若者・家族の⽀援に関わる事業についてご紹介します。

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