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かながわ国際交流財団 設立40周年

1977年の設立以来、2017年で40周年を迎えたかながわ国際交流財団(KIF)。
どんな時代状況の中で、どのような活動を行ってきたのでしょうか。
主な事業をご紹介しながら振り返り、将来を展望したいと思います。

KIFの歴史は、多くの方のご協力で進められてきました。長期間、多岐にわたる事業の中で、現在のスタッフには見えないことも多いと思います。

当時の様子についてのコメントや、お気づきの点などありましたら、ぜひこちらへご連絡ください。

第5回 「湘南国際村」を拠点に研究・⼈材育成・交流を かながわ学術研究交流財団の事業 その2(1999 年〜2007 年)

かながわ国際交流財団(KIF)は、2007 年に(財)神奈川県国際交流協会(KIA)と(財)かながわ学術研究交流財団(K-face=ケイ・フェイス)の2つの財団法⼈が統合して発⾜しました。
この連載の第1回から第3回までは、前⾝のひとつであるKIA の設⽴(1977 年)から、「⼈と⽂化の交流」に始まり、「南北問題」「内なる国際化」に取り組んだ1990 年代後半までをご紹介しました。
第4回・第5回は、KIF のもうひとつのルーツであるK-face のコンセプトと取組を、現在と関わるものを中⼼に振り返っていきます。
<関連年表リンク>
※画像はクリックすると拡⼤します。⼈物の肩書は当時のものです。

●地域社会に⽴脚した研究・実践

1990年代からいわゆるバブル崩壊が始まりました。湘南国際村計画のハード⾯の計画は変更を余儀なくされ、開発区域は縮⼩されていきました。K-faceでも運営全般の⾒直しが進められ、基本財産の取崩や⼈員体制の変更など、⼤きな変化がありましたが、⼈間を価値観の中⼼に置き、「研究」「⼈材育成」「交流」の3つの柱を相互に連関させながら進め、地域から世界に貢献するという事業⽅針は変わらず継続されました。

1999年10⽉に第4代理事⻑として着任した福原義春⽒(株式会社資⽣堂会⻑)は、次のようなメッセージを残しています。

『冷戦終結後、地球社会はその複雑さをさらに増し、今もイラク問題など政治的、経済的な情勢は予断を許しません。⽂化・宗教なども含めあらゆる⾯で⼤転換期を迎えた地球社会の問題点を直視し、次代の変化を予⾒しながら、国際的な視点を持って、⼈間の尊厳や倫理を優先して考える「⼈間中⼼の時代」を創り出す重要性を感じております。私たち財団は、「地球⼈」としての視点を⼤切に、⼈類がその未来を⾃らの⼿で切り拓いてゆくための⼀助となるよう、様々な事業活動を推進してまいります。そして、スイスのダボスに範をとり、神奈川の知的環境として稀有な財産であるここ湘南国際村を基点に、地域から世界に向けて、私たちの活動と提⾔を次々に発信していきたいと考えております』(2004年度K-face年報より)


具体的には、下記のような⽅向で事業が実施されていきました。

・「研究」の成果について、「⼈材育成」「交流」の分野での事業化をより⼀層進める
・グローバル化進展の中での「地域社会・地域⽂化」に重点
・⼤学⽣・⾼校⽣など若年層に向けた⼈材育成事業・⽣涯学習事業の充実など、より広い層を対象とした⼈材育成
・⽂化⼒の発掘と発信、相互理解



●「研究」事業の成果を「⼈材育成」「交流」の分野で事業化をより⼀層進める
〜「グレート・ブックス」関連事業を例に〜


社会が⾼度に専⾨化・細分化されていくにつれて、私たちは、⾃らをとりまく世界の中の多様なつながりを意識する機会を失いつつあるのではないでしょうか。短期的な⽬的を設定し、その達成に注⼒することを繰り返すあまり、様々な事象を俯瞰的に眺めることができる視座、中⻑期的な観点でものを考える姿勢、そして⺠族や⽂化、価値の多様性を受け⽌めつつ対話を続ける姿勢を失いつつあるのではないでしょうか。
K-face は、そうした課題にいち早く取り組んでいました。それを象徴するのが『グレート・ブックス』にかかわる⼀連の事業です。

・「グレート・ブックス」とは
1949 年、⽶国コロラド州アスペンで開催された「ゲーテ⽣誕200 年祭」に招かれたシカゴ⼤学総⻑ロバート・ハッチンスは、「”対話の⽂明”を求めて」と題する講演のなかで、「われわれの時代の特徴のうち最も予期しないものは、⼈の⽣き⽅においてあまねく瑣末化(さまつか:trivialization)が⾏きわたっていること」とし、 “⼈格教育”の必要性と相互の理解・尊敬に基づく“対話の⽂明”を訴えました。そのハッチンスが盟友モーティマ・アドラーと⻑年進めてきたのが『グレート・ブックス』とその関連プログラムの開発です。1950 年には「⽶国アスペン⼈⽂科学研究所」(現⽶国アスペン研究所、本部は神奈川県の友好提携先⽶国メリーランド州)が設⽴され、「対話」を通じて⼈間性への洞察、⼤局観、専⾨性を超える知性、判断⼒、決断⼒といったリーダーに不可⽋な資質を磨くためのプログラムを開発・普及してきました。
プログラムの具体的な内容は、⻄洋の古典名著を参加者全員で読み、対話(ダイアログ)を深めることにより、その名著の持つ物事に対する根源的な考え⽅を学んでいくというものです。⼈々が思い描く理想とは反対に、現実の世界では国家・⼈種・宗教の異なる⼈々の争いが絶えることなく続いてきました。この問題の解決のための精神の涵養を、時代の⾵雪に耐えて⽣き残った古典名著との対話によって⾏おうとしたのです。

・研究事業から⼈材育成、関連機関との交流・普及へ
「グレート・ブックス」関連のプロジェクトは、1996 年から2003 年にわたって下記のように進展していきました。

●グレート・ブックス関連プロジェクト
・基礎調査(⽂献研究、現状調査) 1996〜1998 年
・実験的セミナーの実践 1999〜2000 年
・新規プログラムの企画・開発と実践、外部への普及 2001〜2003 年



グレート・ブックスセミナー
(2002 年1 ⽉)より

グレート・ブックス事業にかかわる研究
報告書・普及⽤ブックレット・ちらし・
新聞記事など

このプロジェクトは、K-face設⽴時に組織された「企画委員会」で、『Great Book of the Western Worldの調査研究』として発案され、のちに海外での調査を実施、さらにセミナー化し、『名著と学び(グレート・ブックス)研究』として⾼校⽣から社会⼈までの対象の拡⼤を経て⽇本での展開の可能性が検討されました。研究成果は叢書『グレート・ブックスとの対話(ダイアログ)〜学習社会の理想に向けて〜』(1999年)、研究報告書「『名著と学び』研究プロジェクトの成果の総括とグレート・ブックスの将来展望」(2004年)」等として発刊されています。
⻄洋の古典を題材としたアスペン研究所の「グレート・ブックス」に対し東洋の古典をテキストとしたセミナーを開発する試みや、モデレータ(進⾏役)の育成を⾏ったほか、神奈川県の教育政策等とも連動し、神奈川県⽴図書館や横浜市⽴図書館でのセミナー実施等へも波及しました。事業は各種読書グループ、⼤学⽣寄宿舎での⼈間形成講座、森永エンゼルカレッジでのアーカイブなど多様な広がりを⾒せています。

激しく急速に変化し、価値観が揺さぶられるグローバル社会で、多様な背景や考え⽅を理解し、対話する⼒は益々重要になっています。「グレート・ブックス」プロジェクトは、現在⼤学教育や⼊試制度改⾰などとの関連で注⽬されているリベラルアーツ教育アクティブ・ラーニングとも深くかかわるものです。
現在KIFが実施している事業の中では、⾼校⽣向け講座「⻘少年国際セミナー(通称“K−PIT”)」で、グレート・ブックス研究から派⽣した【⽬に⾒えないものを考える】ことを根底においています。グローバル社会の課題について現状を知ると共に『平等とは何か』『豊かさとは何か』などの簡単には答えの出ない問題を、時には留学⽣等と共に徹底的に議論(対話)することを重視し、事業⼿法として哲学の専⾨家が進⾏する「哲学対話」やロールプレイ⼿法をプログラムに取り⼊れています。また、調査研究事業のテーマとして“アクティブ・ラーニング”を取り上げるなど展開を進めています。

アスペン研究所との交流により得た、「専⾨化と細分化、職能主義、効率主義、短期利益主義などの飽くなき追求によって失われていく⼈間の基本的価値やコミュニケーション、あるいはコミュニティの再構築を⽬指す」⽅向性は、K-faceの事業全般に⼤きな影響を与えています。



●グローバリゼーション進展の中での「地域社会」
〜環境問題からのアプローチ〜


環境問題はグローバリゼーションの進展の中で早い時期から重視された課題です。K-faceも湘南国際村内に⽴地する地球環境戦略研究機関(IGES)との共催で「K-face/IGES環境セミナー」「環境NPOとの交流セミナー」「企業向け環境セミナー」「地域環境資源学習プログラム研究」など多数の事業を⾏いました。

「三浦半島エコミュージアム」関連事業は、K-faceが続けてきた研究・⼈材育成・交流の枠組で進み、地域から世界を考えるK-faceの特⾊を反映する事業として約10年にわたって継続されました。
「エコミュージアム」とは、⾃然、歴史、⽣活⽂化などの地域資源を発⾒、あるいは再発⾒し、それらを地域の「宝物」として保全・活⽤、継承していく仕組みです。環境を単独で取り出すのではなく、地域で暮らす⼈々の⽣活(産業)や⽂化と幅広く関わり、その保全・継承についても地域住⺠が主体として⾏うことを基本理念としています。

●三浦半島エコミュージアム関連プロジェクト
・「地球環境資源との共⽣」研究プロジェクト(三浦半島エコミュージアム研究) 2000〜2004年
代表:⼤原⼀興(横浜国⽴⼤学助教授)
・エコミュージアム・フォーラム実施 2000〜2004年
テーマ「エコミュージアムとまちづくり」「エコミュージアムと地域の学びについて」など。
・エコミュージアム交流シンポジウム 2003年
基調講演:ピーター・デイヴィス(英国ニューカッスル⼤学教授)
・三浦半島エコミュージアム交流推進事業 2005〜2010年
K-faceがとりまとめた「三浦半島エコミュージアム構想」にもとづき、エコミュージアム活動団体のネットワーク形成を促進。2005 年、「三浦半島まるごと博物館連絡会」が33 の地域団体、横須賀市、鎌倉市、逗⼦市、三浦市、葉⼭町、神奈川県横須賀三浦地域県政総合センター、K-face の参加で発⾜



エコミュージアム・フォーラム(2002年)
地域団体のメンバーを中⼼にワークショップを実施

エコミュージアム交流シンポジウム
(2003年)

(※エコミュージアム関連事業は、統合後もKIFの事業として三浦博物館まるごと連絡会の広報⽀援(ニュースレターの発⾏・ホームページの運営)を2010年度まで継続しました。連絡会は現在も活動を続けています)

三浦半島まるごと博物館連絡会(神奈川県ホームページ)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p523675.html



●より広い層を対象とした⼈材育成
〜⼤学⽣・⾼校⽣など若年層に向けた事業の充実〜


1994年に開始された「国連⼤学グローバルセミナー」に加え、この時期に研究者や開発教育の専⾨家等を講師とした⼤学⽣・⾼校⽣向け事業が開始されました。

インカレ国際セミナー(2003年〜現在も継続)
K-faceの事業の中でもアジアとの関係は⼀貫して重視され、アジアセミナー(1997〜1999年)やアジアをテーマとした研究プロジェクトを実施。2003 年度から神奈川県内を中⼼とした⾸都圏の⼤学が連携し、「東アジア共通の家」を統⼀テーマにした「インカレ国際セミナー」を開始。2013年からの統⼀テーマは「アジアの中の⽇本」。

ほかに、⾼校⽣向け事業として「鎌倉⼥学院国際セミナー」(2001〜2013年)、「⻘少年国際セミナー」(2004年〜継続中)を開始。平和など地球規模の課題への理解と解決を視野に、参加型ワークショップや対話の⼿法を取り⼊れた学習プログラムの開発と実施に着⼿しました。
「鎌倉⼥学院国際セミナー」は、K-face/KIFが蓄積したノウハウを同校に移管し、同校の事業として現在も継続しています。
「⻘少年国際セミナー」実施にあたっては、開始時に企画研究事業として勝俣誠⽒(明治学院⼤学教授)を代表者として「⻘少年の国際教育のあり⽅研究会」を組織。学識経験者・参加型学習の専⾨家・⾼等学校の教員等7名による検討の上実施され、検討報告書を発⾏。現在もKIF主催事業として実施。
(※⾼校⽣・⼤学⽣向けの国際⼈材育成事業について、詳しくは別の回でご紹介します)



●市⺠にひらく「知」の交流

K-faceは、設⽴直後から湘南国際村内の研究機関等と連携した⽣涯学習プログラムを「湘南国際村アカデミア」と題して続けてきました。特に総合研究⼤学院⼤学(総研⼤)と、地球環境戦略研究機関(IGES)との連携によるものが継続的に実施されています(現在は神奈川県⽴保健福祉⼤学も加わり実施)。
また、K-face では、その初期より『学際』という考えを重視して異分野/異業種の⽅の参加を求め、様々な問題を多⾓的に議論してきました。関連事業である「カフェ・インテグラル」は、学際的な切り⼝から、複数の研究者による発題・対話と共に、参加者が研究者と対等な⽴場で話し合い、知を分かち合う催しとして実施されています。



●⽂化⼒の発掘と発信、相互理解

⽇本と世界の⽂化について理解し、互いに尊重しあうこともK-faceの⾮常に重要なテーマでした。⽇中友好会館との共催で実施した「⽇中⽂化講座」、⾳楽を切り⼝に⽂化を紹介する「⽂化と⾳楽の集い」、画家平⼭郁夫⽒がシルクロードで収集した美術品のコレクションの展⽰・セミナー事業「平⼭郁夫コレクション展」など、特にアジア諸国を中⼼に異⽂化理解と受容の精神を醸成してきました。
⽂化関連の事業としてはほかに、⽂化⼈としても著名な福原義春理事⻑のリーダーシップで開始された「21世紀ミュージアム・サミット」があります。
(※21世紀ミュージアム・サミットについては、詳しくは別の回で紹介します)



湘南国際村⾳楽と⽂化のつどい(2000〜2005年実施)
写真は「天平の調べ〜アジアの幻想」(2001年)より

…次回からは、現在も継続している学術⽂化交流事業の中から、「21世紀かながわ円卓会議」、「21世紀ミュージアム・サミット」を中⼼にご紹介していきます。

注※福原義春⽒はK-face理事⻑として着任後、2007年の統合後は統合財団(KIF)理事⻑。2015年退任し、現在KIF名誉顧問。



参考資料

・「地球社会への船出」湘南国際村オープニング・イヤー実⾏委員会 1994年5⽉
・「K-face15年のあゆみ〜かながわ学術研究交流財団の軌跡」かながわ国際交流財団 2008年9⽉
※K-faceのすべての事業の記録が網羅されています。



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・「湘南国際村から」財団法⼈かながわ学術研究交流財団編著 神奈川新聞社発⾏ 2001年3⽉
・『名著と学び』研究プロジェクトの成果の総括とグレート・ブックスの将来展望 2004年12⽉
・⼀般社団法⼈⽇本アスペン研究所ウェブサイト http://www.aspeninstitute.jp/
同サイト内「アスペンの原点とその⽬指すもの」 http://www.aspeninstitute.jp/ideal/
・⼀般社団法⼈森永エンゼルカレッジウェブサイト http://angel-zaidan.org/categ/about_greatbooks/

・湘南国際村について(神奈川県ホームページ) http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5962/
・湘南国際村 http://www.shonan-village.jp/

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