外国人住民の方はこちら

外国につながる若者たちと夢をつなぐ
「神遊協・神福協奨学金制度」の取り組み

外国につながる若者の高校卒業後の進路に対して、支援の必要性の有無を考える時、主に次のような不安要素があげられます。

・経済的要因(学費などの不安)
・言語的要因(日本語能力などの不安)
・心理的要因(将来に対する漠然とした不安感やロールモデルの不在など)

また当事者の若者たちからは、次のような声を聞くことがあります。

「進学する金銭的余裕がないから家族を支えるために高卒で働く」
「学費が払えず中退を考えている」
「専門的な授業についていけるか心配」
「レポートや試験に合格できない」
「就職の際に外見や名前で差別されるのではないか」
「外国籍だと就職できない職種があるのか不安」

これらの不安要素や声が存在することで、高校卒業後の進路の選択肢が限られている、という現状があります。こうした背景をもとに設立されたのが「神遊協・神福協奨学金制度」です。

今回は、この奨学金制度を利用しながら保育士を目指す奨学生4名に、保育士になろうと思ったきっかけや苦労した点など、保育士になるまでの過程から今後について話を伺いました。

「神遊協・神福協奨学金制度」とは

言語や多様な文化的背景を活かせる職種の一つである保育士を目指す、外国につながりのある若者を支援するために設立された奨学金制度。応募者から奨学生を選考し、神奈川福祉事業協会からの助成金と、横浜YMCAからの協力により奨学金(一人につき年間60万円)を給付。
奨学生は、横浜YMCAの協力により、YMCAの専門学校で卒業までの3年間、保育士の資格取得に必要な学習を行う。
広報や、外国につながる生徒とその家族のために必要な言語サポートおよび情報提供等、事業運営全体については(公財)かながわ国際交流財団が担当。
2015年度から募集と選考が開始され、2020年度に卒業する奨学生までで計9名の外国につながる若者たちを支援した。

インタビュー

神遊協・神福協奨学金制度の
奨学生4名にインタビュー

なぜ保育士を目指したのか

保育士になろうと思ったきっかけを教えてください


福田 咲希さん

福田さん:
小学校の頃から保育士になるのが夢でした。

私の母が日本に来てまだ1、2年しか経っていない頃、日本語や日本文化がわからず大変でした。その時に支えてくれたのが、当時私が通っていた、YMCAの保育園にいた通訳さんだったのです。

その様子を間近で見ていて、子どもながらに「困っている外国人を支えられる人になりたい」と思いました。その気持ちは、保育士を目指す気持ちにつながっていきました。

イエンさん:
小学2年生の頃にいとこが生まれ、その世話をしたことがきっかけです。

身近に子どもと触れあえる環境があったので、保育士を目指すようになりましたね。高校生の頃、ネイリストに憧れた時期もありましたが…。

カルラさん:
私は小学生の頃、過去の経験から心理学を勉強したいと思っていました。

でも高校生になって進路をなかなか決められないでいた時、昔から子どもが好きだったこと、ドミニカの保育園でアルバイトをしていたことを思い出し、保育士を目指しました。その時、同時に「子どもの笑顔を毎日見たい」「様々なことを子どもたちに教えたい」と思いました。そうした気持ちの変化が保育士を目指すきっかけでしたね。

林さん:
高校3年生の頃にいとこが赤ちゃんを産み、世話をしているうちに「保育士になりたい」という気持ちが芽生え、目指すようになりました。元々、お菓子を食べるのも作るのも好きだったので、パティシエになることも夢でした。

「神遊協・神福協奨学金制度」をどのように知りましたか?

林さん:
私は、通っていた高校の担任の先生に「神遊協・神福協奨学金制度」のことを教えてもらいました。その後、相談にも乗ってもらいました。

福田さん:
YMCAの入学前説明会に参加して、自分が外国籍であることを学校に伝えました。その時に「神遊協・神福協奨学金制度」について詳しく教えてもらいました。

進学支援に関する情報は、自分から積極的に探していたので、結果としてよい情報が得られたと思っています。


ファン ティ キム イエンさん

イエンさん:
私は「神遊協・神福協奨学金制度」があるからYMCAを選んだというわけではなく、入学前に外国籍であることを伝えた時に紹介してもらいました。

カルラさん:
私は学校で進路について相談していて、YMCAを見学することになり、見学時に「神遊協・神福協奨学金制度」について詳しく聞きました。具体的に進路を考えるまでは知りませんでした。

YMCAを選んだ理由はありましたか?

林さん:
先ほど話したように「神遊協・神福協奨学金制度」があるからという点と、YMCAの戸塚校は、保育だけではなくスポーツも学べる点を魅力的に感じていました。スポーツは得意ではありませんが、「好きになりたい」という挑戦心がYMCAを選んだ理由です。

カルラさん:
私は、高校の担任の先生にいくつか学校を勧められて、見学に行っていました。そのなかでYMCAは、私と同じように外国籍の学生が多いことを知りました。当時の私は、まだ日本語がうまくないことに不安を感じていました。ですから「外国籍の学生が多いYMCAなら、様々なことをうまく教えてもらえるのではないか」と思い、YMCAを選びました。

イエンさん:
「神遊協・神福協奨学金制度」があったことも選んだ理由のひとつですが、入学前は保育士だけではなく、福祉の仕事にも興味がありました。そのため、保育士免許を取得できるだけではなく、福祉のことを学ぶことができる「人間福祉コース」がYMCAにあったことがきっかけです。

福田さん:
「保育士になるきっかけ」でも話しましたが、私自身が通っていた保育園は、YMCAが運営する保育園でした。YMCAの保育園で育ったことが、保育士を目指すきっかけになったので、YMCAで保育士免許を取ることを決めていました。

「YMCAで学び、YMCAの保育園で働く」ことが私の理想でしたね。