かながわ民際協力基金 助成団体インタビュー
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かながわ民際協力基金インタビューVOL.6

かながわ国際交流財団の「かながわ民際協力基金」による助成金を活かし、県内の在住外国人や世界中の人々へのさまざまな支援活動をするみなさんの思いを伺います。
※その他のインタビューページは → こちら

「外国につながる若者」が抱く迷いを共有できるような「つながり」を
「多文化ユースププロジェクト」 代表 王 希璇(わん しーしぇん)さん
(インタビュー実施日 2022年2月7日)
ホームページ:https://multiyouth.com/multiculturalyouth


「多文化ユースプロジェクト」という団体名にはどのような思いが込められていますか?

最初に「外国につながる若者たち」への情報支援の活動を行いたいと思ったのは、一昨年、私が大学3年生の時です。私自身が就活を行うようになって、日本でこれから働くことを意識した時でした。いろいろな企業が合同で開催している「日本人学生向け就活イベント」や「留学生向け就活イベント」に参加していく中で、自然と「自分はどこに属していればいいのかな?」という素朴な疑問が湧いてきました。私は「留学生」ではなく、かと言って外国にルーツを持つ者として、日本人学生と同じ立場で就活することが果たして良いのかどうか?と、非常に迷い、いろんな疑問が浮かんできて、もやもやした気持ちになりました。

私のように比較的小さい頃に日本に来た子たちは今どうしているのだろう?、日本での生き方や進路などはどうやって決めているのだろう?、学校を卒業して働く場合、自分のアイデンティティやルーツを活かしながら生きているのだろうか?、それともそうしたことを一切出さずに日本人の学生と同じように就活し働いているのだろうか?....といったことを、その時から考えるようになりました。そして、そこには後輩たちへの想いももちろんあるのですが、外国につながる若者である私たち自身の横のつながりがとても弱いことに気づきました。

例えば、日本人生徒や学生を対象とした高校進学時の進路ガイダンスや就職活動におけるOB訪問などで先輩に話を聞く機会はたくさんありますが、横のつながりが弱い、今のままで私たち「外国につながる若者」が社会に出た時に、まったく私たちのアイデンティティや特色が見えなくなっているのではないか、ということを強く感じました。これは、とてももったいないことだと感じて、「留学生でもない、日本人学生でもない、多文化、多様な背景を持っている若者たち」の横のつながりを強くしていきたいという想いを「多文化ユース」という名前に込めています。

「先輩はどうやって日本語を勉強したのか」「高校の時にこれが大変だった」「日本に来て大変だったこと」などを聞いて「あぁそうなんだ」で終わってしまう場合もありますが、こうした話を聞いて救われる人もいると思います。例えば「こういうところで悩んだ」といったところから先輩の「人間性」なども含めてロールモデル(自分の行動や考え方など、キャリア形成の上でお手本となる人物)として捉えていくこともあるのではと思います。同じ年代同士の「横のつながり」と、先輩と後輩という「縦のつながり」を作っていけたらなという想いがこの団体の立ち上げにつながりました(画像は多文化ユースプロジェクトのHP)。



また私たちの団体は民際協力基金の助成を頂いていることもあり、神奈川県を中心に活動をしているのですが、オンライン上での活動がメインになっているので、全国どこからでもアクセスが可能です。例えば東京であれば、支援団体が数多くあり大学の先生など研究熱心な方もいたりしますが、一歩ひいて日本全体を見てみると、サポートしてくださる人がほとんどいない地域もあるでしょう。そうした環境にいる子たちでも先輩の経験談を聞くことができるようにオンライン上でつながることができるかたちを作っています。

「こういう先輩がいたんだ」「住むところは離れていても同じような経験をしている人がいるんだ」ということを知るきっかけとなったり、また連絡先も載せているので実際に、直接つながることもできます。ここにくれば同じような人がいて安心できる、といったプラットフォームができればという理想を描いています。現実は、まだまだ理想にはほど遠いですが、このような気持ちで「多文化ユースプロジェクト」を立ち上げました。


メンバーの方は全員20代ですね。みなさん学生さんですか?

学生もいますし、新社会人もいます。私も4月から新社会人になります。日本に来ていろいろな経験を持つ20代メンバーがいるので「外国につながる外国人大学生の就活」に関しても少しずつ紹介していければと思います。またメンバーの山崎・ラジャン・バレンシアさんも今年4月から新社会人となりますが、彼は「自分のプログラミング技術を活かして『多文化共生』に貢献していきたい」ということも思っており、彼の技術による、かなり精度の高い多言語自動翻訳システムが私たちのホームページでも活かされています。ボタンを押していただければ「先輩たちの体験談」なども多言語で翻訳が表示されます(画像はHPに掲載している、山崎さんの進路体験談のページから/画像をクリックすると拡大します)。民際協力基金の助成金も翻訳システムの構築などに活用させていただいています。




誰かを直接支援する、というより、オンライン上のプラットフォームを整備する情報支援になるのですね。

私たちの現在の活動スタイルとしては、何かを形成するために「点」の活動をし、それを「線」で結び「面」として広げていくというような直接支援を広げていく、というイメージよりも、「面」としての受け皿を準備しておいて、対象者がアプローチしてきたらいつでも対応できるようなかたちを目指しています。これまでにも(外国人が集住している地域ではなく)散在地域の中で孤立している子がいて、その子の先生から「その子にアドバイスできるようなことはないですか?」と相談を受けて、「2時間だけその子と話す時間を作るのでお願いできませんか」というお願いをされたこともありました。なので、個別の直接支援を行う体制を整えるのではなく、「面」としてホームページに搭載するプラットフォームを整備することが重点課題となっています。

実は活動を始めた当初は、オフラインでさまざまな活動をして、いろいろな子にアプローチできる環境を作っていければと考えていましたが、コロナ禍の今は、どうしても対面での活動が難しいので、オンライン上の活動を充実させていくことにシフトしています。


具体的な活動の内容についてお聞かせください。

民際協力基金の助成事業の目的としては3つありました。①外国につながる子どもたち(主に高校生)の進路支援をすること、②外国につながる若者(多文化ユース)のネットワークをつくること、③外国につながる若者の現状を社会に積極的に発信していくことです。ちなみにここでいう「外国につながる若者」とは、私たちのように母国で生まれ育って、途中で日本に来た外国人児童生徒の総称として使っていますが、日本国籍を持つ場合も含めて「外国にルーツを持つ人たち」のことを指しています。

①の進路支援についてはホームページ上のプラットフォームの整備を通してのものとなるので、直接、子どもたちの反応が得られるわけではないですし、また直接、高校生とコンタクトをとることはプライバシーの問題もあります。高校の先生から見たら私たちは、当然ですが外部の一団体に過ぎないので、そこをどう乗り越えていくのかはこれからの課題です。多言語の翻訳システムも活用しながら、身近なSNSツールであるLINEを使って気軽に相談してもらえるような窓口を作っていければと思います。

またこの他に、NPO法人ME-net(多文化共生教育ネットワークかながわ)と協力しつつ高校生の進路指導関係の活動や、コロナ禍を受けて外国ルーツの家庭に食糧支援なども行いました。食糧を発送するなどの補佐的なかかわりではありましたが、親が飲食店関係に勤める家庭やシングルマザーの家庭では、家計的なダメージが大きく収入がない状態が続いた家庭もありました。

②の外国につながる若者のネットワークについては、それぞれの人生や生活がある中で「同じような境遇の子どもたちを支援するお手伝いをしませんか?」というのは、こちらの一方的な都合になってしまうので、活動に興味がある人たちとどうやってつながっていけるのかが大事だと思っています。今はそれほど活動に興味がなくても、例えば大学のキャリアセンターのように一旦登録しておくことで、高校生の関心に基づいて紹介できる先輩としての情報をストックし、実際にいつでもその先輩につなげることができれば、もっと高校生も信頼して相談してくれるような関係を築くことができるのではないかと考えています。

③の情報発信については、HPで外国につながる若者の経験談を紹介しているのですが「なぜ私たちのことを知っているの?」というところから連絡や問合せがあるので、私たちが思う以上にHPが広く閲覧されているのかもしれません。今後は若者が情報入手先としてよく使いそうなInstagramなどの SNSによる情報発信も心掛けたいです。日本に住む外国につながる人たちがよく経験する「あるある」のようなものから始めて興味を持ってもらって、次第にホームページ搭載のプラットフォームの方にも関心を持ってもらえればと思います。そして将来的にLINE登録につなげられれば、つながりを作っていくこともできるかと思います。今は、私たちの活動を外にむけて発信する広報活動がほとんどできていないことを痛感しており、とてももったいないと思っているところです。


新型コロナウイルス感染拡大によって「多文化ユースプロジェクト」の活動にも影響はありましたか?またどのように対処されましたか?

何より「対面ができない」ことになった時に当初予定していた活動ができなくなり、助成金をどのようにして有意義に使っていけばよいのか、自分たちの活動としてどのように実現させていくのかということが、正直言って私たちも全員が学生だったので疎い部分があったと思います。結果として今回の助成金での使途がかなりの割合が記事の作成や翻訳を直して頂いたことへの謝礼として使われました。そこでホームページなど充実させることはできたのですが、「対面ができなくなったこと」でもったいない使い方になってしまったのかなと思う面もあります。もし「対面ができたら」会場を借りて他の人を呼んで色々お話できたのにと思います。

それこそもともと企画していた「支援者」と「支援される側」のそれぞれの立場での思い、「支援者はどういう気持ちから支援するようになったのか」とか「支援される側」はどういう気持ちで日本で生きているのか、そういういう対談も当初は予定していたのですが、その実現が中々難しくてできなかったのです。それを含めてもったいないなという感じが大きいと思っております。対面ができなくなってからオンラインに切り替えれば済むという所もあったのですが、そこが上手く対応しきれていなかったという所が、ちょっと残念だったと思います。
(画像は、団体で調査した「日本に居住する外国につながる若者に対するコロナウィルスの影響」のアンケートの結果報告のページより/詳しくはこちらを参照https://multiyouth.com/multiculturalyouth/articles/656a1dad-ce63-4039-9923-02c2eab2bbb4




「かながわ民際協力基金」を知ったきっかけとどのような想いで申請されたのかをお聞かせください。

「かながわ民際協力基金」を知ったきっかけはME-netの高橋さんが私たちの団体の助言役としてついていてくださったのですが、団体を大きくしていくつもりがあるのであれば、ちゃんと公的助成金があった方が色々なバリエーションある活動ができると助言され、自分でネット検索して申請しようということになりました。初年度は助成金審査に通ったということで「我々の活動が認められた」という思いがとても嬉しかったです。それがきっかけでした。

ただ実際に助成を受けて活動して感じたことは、率直に言うと助成金を得て行う事業と得ないで行う事業、そこの責任は全然違うという感覚はあります。申請団体を信頼して助成する訳ですし、申請した事業プランをしっかり実現させていかなければいけない一方で、コロナによって当初企画ができなくなってしまい「お金の使い方が凄く難しかった」ということもあります。

特にもともとの事業企画と内容が大きく変わる中でいかに早く「では、こうしよう」とか「すぐ相談しよう」というところまで至らず、そうして点においても「助成金」の重さを感じました。助成金を頂けたことはすごく光栄なことですし、それに応えたい気持ちはあったのですが、正直うまく活用できなかったことは悔しいです。それこそもう1回プランを見直して、助成金の使いみちと助成金を使わなくてもできることをしっかり見直して再チャレンジしたいという気持ちがあります。「助成金の20万円はこのようにして有効に使い切りました」と言えるようになれれば、というのが励みになっていますね。


民際協力基金の枠組みについて「もっとこうだったら良いのに」という希望や思いなどはありますか?

初年度は会計処理のやり方などで戸惑うこともありましたが、財団職員の方が丁寧にフォローしていただきました。助成を3年連続で受けた翌年は申請できない、というのも活動を見直す機会にもなってよいのかと思います。私たちの団体は2年連続して助成金を受けた後、申請をしていませんが、その方が3年連続で助成金をいただくよりは一旦、事業を立て直した方が将来的に良い、と判断したからです。

ただ一方で、事業を立て直した後に3年連続で助成を受けることができた場合には、1年お休みになるのは痛いかなという気持ちもあります。それで4年目の助成もできるようになれば事業者としてはやり易いのではないかと思います。いずれにしろケースバイケースで判断するところが大きいので、前年度の活動実績などを振り返りながら検討していけばよいのかなと思います。


今後のビジョンについて思い描いていることを教えてください。

私の大きな理想を言うと日本にいる「外国につながる人たち」が、実際に生活していく上で必要な情報――たとえば子育てや教育について言えば「日本で子育てすることはどういうことなのか」「子どもは今この年齢だけど教育のシステムはどうなっているのか」「親子間で生じる日本語コミュニケーションのズレの問題はどのようなものか」といった情報が整理されたポータルサイトができたらいいなと思っています。そのサイトでは、教育だけでなく住宅にかかわるものなどあらゆる生活情報がYahooの情報サイトみたいなどこでもだれでも気軽に見られる「外国につながる人たち」向けのポータルサイトができたらいいなと思っています。

大きな理想とはなりますが、私たち自身が実際に経験して得てきた情報を少しずつでも発信していけば他の方たちも協力してくれることもあるでしょうし、自分たちだけで作っていくというよりは他の団体とも連携しながら横のつながりを作っていくことで、さまざまな情報も整理しながら発信していければと思います。

それからオフラインでも活動していければと思っています。定期的に希望者がオフラインで集まって気軽に「日本での生活をシェアできるような環境」をつくりたいと思います。欲しい情報がバラバラに散らばっていて、それはどこかに行かないと得られない、とかどこかの先生につないでもらわないとわからない、といった状況を変え多様な選択肢を見せることで、自分自身で日本での生き方を見つけられるようなその手助けが少しでもできればと思っています。
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