かながわ民際協力基金 助成団体インタビュー
Home > かながわ民際協力基金 助成団体インタビュー > 外国人とともに居心地のよい地域をつくっていくために
かながわ民際協力基金インタビューVOL.5

かながわ国際交流財団の「かながわ民際協力基金」による助成金を活かし、県内の在住外国人や世界中の人々へのさまざまな支援活動をするみなさんの思いを伺います。
※その他のインタビューページは →こちら

外国人とともに居心地のよい地域をつくっていくために
●はだの子ども支援プロジェクトゆう
●代表 田口香奈恵さん/副代表 三田村晴美さん/事務局長 山森理恵さん
(インタビュー実施日:2022年2月21日)
はだの子ども支援プロジェクトゆうHP https://pjyou.jimdofree.com/


【団体概要】
外国ルーツの子どもたちと家庭をサポートする、さまざまな活動を神奈川県西部で実施。当初は秦野市で活動を開始し、伊勢原市、中井町、松田町と活動範囲が徐々に広がっている。東海大学インターナショナルコミュニケーションクラブ(TICC)と連携しながら活動を展開中。会員24名、サポーター21名(2022年1月現在)。
現在、民際協力基金の助成金を活用して、Digital Story Telling(DST)という手法による「自分のストーリーを元にしたショートムービー」づくりに取り組んでいる。(写真:左から副代表・三田村さん、代表・田口さん、事務局長・山森さん)


団体名「はだの子ども支援プロジェクト ゆう」の特に「ゆう」に込めた想いにはなにか意味合いがあるのですか?


田口:
「ゆう」という言葉が、まずはみなさんに知っていただくためにも、発音として呼びやすいもの、ということがあります。また、ひらがなで書いているのは、「ゆう」にはさまざまな漢字が当てはまります。例えば「友」、「結」、「悠」それから「遊」なども思い浮かびますが、参加された方がこの「ゆう」に色々な意味をそれぞれ持ってもらいながら、一緒に集って活動できれば、という想いもあります。


また英語の「You」もありますが、これには「あなたと向かい合う」とか「あなたのために(それは自分自身のためにもなるものですが)」といった意味も込められています。


三田村:
団体を設立する前から、学生さんたちと一緒に公民館で学習支援の活動をしていた時に「あなたは、どう考える」とか「あなたは、どうしたいの?」というやりとりを学生さんや子どもたちとよくしていました。そして、これはほんとうに恥ずかしいお話しですが、団体ができる前に施設予約をする際に「団体の名前がないと予約ができない」という、差し迫った状況になって、田口さんが言われた「あなた」というところから出発して名づけたものです。


そして、活動していく中で、改めて「ゆう」には多様な意味合いがあることを感じて、毎年総会を行う際には、「今年の自分たちが思う『ゆう』にはどんな字を当てはめますか」と話し合うのが恒例になっています。



団体設立の経緯については、上智大学職員として子どもたちの学習支援をされていた三田村さんが、東海大学の学生ボランティア団体TICCと共に「外国ルーツの子どもたちの学習支援活動」を始めたことがきっかけのようですね。


三田村:
上智大学の職員として学生さんを派遣する「家庭教師派遣コーディネーター」をしていたのですが、あくまで派遣するだけでしたので、当初、子どもたちから「三田村さん、教えて」と言われた時はとても躊躇しました。ただ、その後、田口さんとの出会いがあり、今の活動の母体となる外国人の学習支援ボランティアがスタートすることになります。


田口:
2010年、私は東海大学インターナショナルコミュニケーションクラブ(TICC)の関係者として、厚木でボランティアが集う会合に参加していたのですが、そこで、上智大学の職員として参加されていた三田村さんと出会いました。今振り返ると、とても大事な出会いだったと思うのですが、そこでお会いして、しばらくはそのままになっていました。


その後2012年に三田村さんから「夏休みの宿題支援を手伝ってもらえませんか?」という連絡を頂いて、TICCの学生が協力したということが始まりでした。ちなみにTICCは2006年から活動しており、現在は「多文化共生」を目標に掲げて「異文化理解」「学習支援」「留学生のための支援」という3つの支援活動をしています。


私自身がTICCのアドバイザーを務めており、大学の関係者として学生に働きかけもできるし、「ゆう」の代表としても関われるので、すごく有難いポジションにいるのかなと思います。また事務局長の山森さんは、職場の同僚であり留学生に日本語を教えているのですが、私たちの活動に興味を持ってくださって、一緒に活動してくださるようになりました。


山森:
私が「ゆう」の活動に加わったのはごく最近のことで2019年からでしょうか。実はあまりよく記憶していないのですがTICCの学生たちを対象とした学習支援ボランティアの聞き取り調査を行ったのをきっかけにして、「彩とりどりの勉強会」(「ゆう」の有志とCRI(Children’s Resources International )が開催している学習支援勉強会)が始まった後の時期になるかと思います。


田口:
それぞれが個別に思いがあってそれが出会いによって重なったという感じです。三田村さんは上智で活躍されていて私は東海大のTICCにも関わりがあって、山森さんも個別にさまざまな活動をされているので、それらが重なって良い効果をもたらしているような気がします。



「ゆう」の具体的な活動内容と、活動に対する考え方や活動を通して気づいたことについて教えてください。



田口:
次の5つからなります。「放課後学習支援」「学校同行支援」「保護者支援」「地域協力」「啓発、養成活動」です(画像参照)。活動内容が多岐にわたっていますが、参加された方がバラバラになっていてはまったく意味がないので、一緒に活動することの想いや、それに加えて外部とのつながりもとても重要だと考えています。


また、これは活動を重ねていく中でわかるようになったのですが、その場の学習支援で終わるのではなく、私たちの活動に関心を持っていただくために学校や教育委員会などにも働きかけることの必要性を感じています。これは、その場の支援だけをしていても、その子どもが抱えている学校や家庭環境などの背景をきちんと見ないと、支援がその場限りのものになってしまうのでは、と懸念してのことです。



例えば教育委員会へのアプローチはどのようなかたちで行うのでしょうか。


三田村:
活動を通して、教育委員会の教育指導課の課長さんとつながると私たちの支援活動もスムーズに継続できることがわかってきたので、しばらく連絡していなくても機会を見て(例えば新年度に入り落ち着いたころに)教育委員会の教育指導課にお電話して「私たちの団体はこういうものですが、引継ぎをされていますか?」とお聞きすることにしています。また各学校に対しても管理職も異動で替わるのでその時期を見計らってご連絡しています。



外国ルーツの方々とはどのようにつながっておられるのでしょうか。


田口:
例えば幸い私たちはブラジルのコミュニティのリーダーの方とつながっているので、その方をとおして連絡をしあっています。その方ぬきでは、ブラジルの人たちへの支援活動は成立しないという面もありますね。


三田村:
他にも、フィリピンの方たちのコミュニティがあるのですが、それは5年ほど前、隣町の中井町に工場ができて、来られた方々です。私たちはその方々のうち数名のお母さんとダイレクトにかかわりがあり、これからリーダーになりそうな方がいらっしゃることまでは把握しています。



支援している外国ルーツの家族や子どもたちと接していて感じることがあれば教えてください。また、どのように考えて接しておられるか、聞かせてください。



田口:
保護者の方から「信頼して子どもを預けている」ということを伺うととてもうれしく思います。


三田村:
今は専門学校生になっている子がいるのですが、小学校1、2年生でまだ背負っているランドセルの方が大きいくらいの時に上智大学の活動で関わり始めて、TICCとの連携による学習支援活動である「にこティー教室」にずっと通い続けてきた子です。


中学生になって以降、本当によく振り返って「三田村さんはじめ大学生のみなさんと勉強したから今の自分がある」ということを頻繁にフィードバックしてくれるのですね。本当に「この活動やっていてよかったな」、「ありがたいな」という気持ちになります。他にも何人か継続的に関わってきた子が、やはり成長して自分で自立した意識をもつようになったと感じた時にそのように思います。


ご家庭に伺うこともありますが、日本人の場合ですと、例えば「ちょっと待ってください。家が散らかっていますので」となることが多いかと思います。一方、外国の方はウエルカムで「日本人で話を聞いてくれたのはあなたが初めて」とか「一緒に話を聞いてくれる人はほとんどいなかった」と言われます。それこそ「友」としての「ゆう」になれること、とても大切なことだな、と感じます。「感謝する」というよりも「シェア」してくださることを感じました。日本で生活しているけれど、なかなか日本人と話したり一緒に何かを食べたりする機会はないのだな、と感じますね。


またパキスタン人のお父さんが工場をもっていて、たくさん子どもがおり、上の子どもたちの進路支援には当時、一人ずつ丁寧にかかわってきた家族がいます。昨年のことですが、下の子たちのこともとても心配されていた、そのお父さんと進路の相談をしていた時に、「田口先生と三田村先生をパキスタンにお連れするんだ」と言っていろいろなプランを聞かせてくださいました。「私たちを一緒に母国に連れていきたい」と言ってくれたことは、そのプランが実現するかどうかは抜きにして、とても嬉しかったことです。


山森:
こちらが「助けてあげる人」、外国人家族の方が「助けられる人」という考え方ではなく「お互いがなにかを一緒にやっていく」という気持ちで接しています。私たちが助けてもらえること、教えてもらえることが数多くある、という姿勢で、一つ一つのことを一緒にやっていくという気持ちが強いです。


私たちが、助けてもらっていること、教えてもらっていることの方が多い、と考えて活動しています。一方的な支援というスタンスではなく、共同作業でこの社会、居心地の良い地域をつくっていくという受け止めです。



今後の課題としてはどのようなことがあげられますか?


山森:
私たちの今後の活動課題としては、「活動の深化」と「外部との連携」が挙げられます。「活動の深化」については今、いただいた助成金でちょうど活動しているDigital Story Telling(DST)があげられます。これは、教室に参加している方々がそれぞれ、作品を作ることを通して自己表現をし、みんなで互いに深く理解するという活動です。また、作品ができたあかつきには、その作品を通して近くの他団体と交流の機会を持ち、つながることができればと考えているところです。


単なる動画なら一人で作ることも可能だと思いますが、DSTの場合、一緒に作るということが大切です。他者と話し合いながら「自分がなにを表現したいか」「話したいことはなにか」を一度全部出してもらって、それを整理してストーリーを作るという、そのプロセスを踏むことで、自分自身も思わぬ発見があったり、周りの人は他者を知るという面白さを感じることができます。お互いに理解が深まるという利点があるので、そのプロセスを含めての作品づくり、というところに意味があると考えています。


今はコロナの関係でなかなかスケジュールが組めないということもあって、まだ(支援者と学習者ではなく)支援者同士で互いに話し合って作品づくりをする段階ですが、協働の面白さが見られます。実際に作品づくりをしている中で、自分はここに来る前にこんな作品にしよう、と決めていたけれどもパートナーの人から、どんどん自分への質問を受けて答えていく中で「自分の中で新たな気づきがあった」と、最初に予定していたものと違う作品をつくった方もいます。


田口:
「外部との連携」については、DSTの発表の場が他の団体にも声をかけやすい活動のポイントになりそうです。こんな活動をしているので参加しませんかと言うことで声掛けをしていく、ということが考えられます。また伊勢原には、いくつも「日本語教室」があり、さらに「外国人支援」もされている団体があり、その方々とも「定期的に集まって色々な活動をやりたいですね」という話をしているので、今後はそういったところにも参加していきたいと思います。


山森:
また外部との連携を考えた場合に情報発信も大切だと思ってはいますが、ホームページには今、基本的な情報しか載せられていません。活動内容がもっとわかるようなものにできれば、と思っているのですが、もう少し余力があれば取り組みたい、という段階です。とりあえず、やっとホームページから見学申込みや教室参加申込みができるようになりました(参考:HP トップページの画像)。口コミだけではない形でアクセスしてもらえるルートを用意することも大事なのかなと思っています。



今回の助成事業(2020年10月から翌年9月まで)について、新型コロナウイルスの影響は受けましたか? またどのように対応されましたか?


田口:
もちろん受けました。物理的に先ず教室が開けなかったです。ただこうした中でも「勉強したい」という声が寄せられて「では、どうしようか?」と検討した結果、Zoomでオンラインの教室を定期的に開くことにしました。子どもたちに加えて、コロナによって仕事を失った方から、今のうちに日本語を勉強しておきたいという声もいただき、必要に迫られていたので、とりあえずやってみよう、と始めてみました。


手探りで最初は恐る恐るやっていたのですが、意外とできるということがわかったり、一方で、やっぱり難しいなという面も出てきたりしましたが、例えば、自分の力でZoomに入ってくることができない子どもがいれば、親御さんに働きかけて三田村さんがその子どもの隣にいて使い方を教えたり、低学年の子どもだとオンラインではなかなか集中力が続かないので支援者がそのご自宅までいって付き添いながら一緒に勉強しました。そういったサポートをしていく中で今のかたちがちょっとずつできあがっていきました。



かながわ民際協力基金のことを知ったきっかけと、申請するにあたりどのような点が大変だったのかを教えてください。


三田村:
財団事業への参加がきっかけで、職員の方とお知り合いになって、私たちが「学生ボランティアの交通費が払えない」といったことを相談したら、かながわ民際協力基金という助成事業を紹介いただきました。ただ当初は、助成金を頂いて活動する、ということがあまりピンときていなかったですね。ボランティアというのは自分たちのお金を持ち出して活動するものだと思っていましたから。


でも「活動してくださる学生さんが、可哀そうだよね」ということが出発点としてありました。ただ助成金がいただけると言っても、活動が決して楽になるとは思いませんでした。実際にたくさん書類を書かなければいけないし、考えなくてはいけないし、手間は増えますし(笑)。


山森:
多くの書類を作成すること、また、そのために計画を立てなければいけないことは正直、大変だったのですが提出の期日もあるので頑張れました。振り返ってみると、私たちの団体にとって良い機会になったと思いますし、採択が決まってからは、「きちんとやらなければ」という気持ちが活動を進めていく原動力にもなっていますね。


田口:
助成金申請が採択されたことにより、私たちの活動が公に認められたと感じました。団体設立前に個人で動いている時期があったのですが、その時は「あなたたちは何者ですか?」という扱いを受けていたので、団体にならないと対外的に信頼は得られないのだなと思いました。団体になった時にこれで少しは信頼が得られるようになるのかなと思いましたが、助成金を受けることによって、それが更に自分たちの「自信」ということではありませんが、「このまま頑張れば良いのだ」という気持ちになりました。


団体として活動していく上で、責任もって計画を立ててことを実施することは非常に大切なことですし、学生さんの交通費についても実費までは行きませんが、少しでも渡せるというのは、私たちにとっては有難いことです。そしてそれが、自分たちのお金だけでなく、助成金として頂いた分を使って良いという「安心感」があります。



助成事業の枠組みについて「もっとこうだったら良いのに」という希望などがあれば教えてください。


三田村:
わからないことが出てきた時、「あれ?これは財団の誰にきけばいいのかな?」と私の方でよく理解していなくて、もしかしたら違う担当の方に変な質問をしている場合があったかもしれません。この件はこの方と教えてくださっている筈ですが、情報提供をしていただく側にとっては当たり前のことが、受け手側がわかっていない場合が多いのかもしれません。


また、民際協力基金は3年連続して申請可能ですが4年目は1回お休みになります。私は同じ団体が永遠に申請し続けること自体が良いのかどうかはわかりませんが、個人的にはもちろん4年目も続けて申請できれば有難いです。もちろん、採択されればですが。


田口:
民際協力基金の会計の区切りが活動期間に基づいて10月から翌年9月までに設定されています。こちらの事情ですが、は4月始まり3月終わりの「ゆう」の会計年度と違っており半年ずれているので、その処理がいつも混乱してしまいます。問い合わせに関してはいつもとても親切に応えてくださっています。



「ゆう」のこれからについて教えてください。


田口:
先ほども触れましたが、人手不足と言いますか、仲間がなかなか増えません。何をするにも一緒に動いていただける方々はとても大切な存在です。そのため今回、いただいた助成金を活用してオンライン講座も開催しましたが、そうしたことも活動の輪を広げていくためには有効な方法かと思います。また財団事業の中で、活動紹介をする場をつくっていただき、そこで興味を持っていただいた方がいらして、少しずつですが関わってくださる方が増えているところです。


今後の活動をどうするかということをよく運営会でも話しますが、その中でNPO法人にするかどうかが議論になります。今の段階で法人化することがいいのかどうか、という点から議論して、むしろ今は自分たちの基礎体力をつける方が大切なのではないかという意見もあります。


三田村:
52期(2020年)の助成申請をして採択された際に、併せて「中長期的な観点から、今後の活動のあり方を考えてください」という課題を与えられたと受け止めていて、それについての話し合いを現在、進めているというのが現状です。私たち自身も中長期的な活動の姿は、現在の活動を行いながらでないと見えてこなくて、最初から「これ」と自信をもっていえないですね。ニーズに応えていくことを重ねながら「なんとなくこっちかな」という方向性を探っているところです。
PAGETOP