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小田原市文化セミナー特別編・SaMalアートリンクキャラバン「「文化資源×アート」様々な可能性をみんなで考える公開セッション」で、マルパについて報告しました

1月20日午後、小田原市にある国登録有形文化財である旧内野醤油店内蔵にて、「文化資源×アート」をテーマとしたセミナーが開催されました。セミナーに先だって、午前中に小田原市内の旧内野醤油店の他、同じく、有形文化財である松永記念館(※1)を見学しました。
午後の開会時に小田原市(文化政策課)より、今回のシンポジウムの趣旨として、小田原市の文化事業として「歴史的建造物の活用」と、「文化創造活動の担い手育成」を併せる形で、旧内野醤油店での開催となったとのお話しがありました。

まず、基調講演として、東京・吉祥寺で市民としてアートセンター「Art Center Ongoing」(※2)を運営されている小川希氏(同館代表)より、「必要なプロジェクト、必要でないプロジェクト」と題したお話しがありました。
日本国内における現在のアートプロジェクトの流行の後、最終的に残るプロジェクトと残らないプロジェクトの違いは、主催者個人のプロジェクトを継続する上での「必然性」の有無であること、小川氏にとってその「必然性」とは、「アート」と「社会」をつなぎたいという動機であるとのことでした。

事例発表では、マルパについて、神奈川県立近代美術館の籾山さん(マルパ作業部会委員)とともに、私(野呂田)がお話しをさせていただきました。
従来、美術館が対象としてきた「地域住民」として、障がい者や定住外国人が認識されていないこと、マルパでは障がい者や定住外国人が楽しめる美術館のアートプロジェクトを実施していること等について、私から説明をしました。そして、籾山さんからは、マルパを契機として、神奈川県立近代美術館における社会包摂事業(発達障がい児を対象とした写真ワークショップ等)を開始し、その事業が同館にとって新機軸となっているのは、障がい児が異世代(大学生等)との交流を、アートを使ってフラットに行っているためと説明しました。

小川氏の「社会」と「アート」を「つなげたい」という強い動機は、マルパと共通するものがあります。マルパでは、より障がい者や定住外国人に力点を置きながらアートプロジェクトを展開していますが、こうした「何か」と「何か」を「つなげる」といった、関係性の構築をコンセプトとした、小川氏の継続的な実践に深く共感しました。(野呂田)

※1 松永記念館:小田原市HPより
松永記念館は、戦前・戦後と通じて「電力王」と呼ばれた実業家であり、数寄茶人としても高名であった松永安左ヱ門(耳庵)が、昭和21年に小田原へ居住してから収集した古美術品を一般公開するために、昭和34年に財団法人を創立して自宅の敷地内に建設した施設です。

※2 Art Center Ongoing:同館HPより
Art Center Ongoing:いまの時代を担う必見アーティストを紹介するギャラリースペース、新旧アートブックの閲覧も可能な交流の場としてのカフェ&バースペース、そして独自のネットワークにより編纂した広範なアーティスト情報を提供するライブラリーブースを併設する芸術複合施設


旧内野醤油店 醤油工場

旧内野醤油店全景

松永記念館